靴投げ事件と帰国と
12月7日のイベント日以来、犠牲祭の祝日が続き、ヨルダンでは
公休日となった7日~10日をはさみ、前後の金-土曜の通常の
週末も含めると実質的には5日から13日まで地元の人はほとんど
仕事が手につかない状態だった。
相手が動いていないと仕事にならないが、自分も全部休んでいる訳
にはいかないので、そこそこに仕事の取りまとめを...などと悠長に
構えている間もなくあっという間にこの期間も過ぎて、ばたばたと
14日の夜にアンマンを発ち、日本へ帰国の途に着いた。
どうも日本と現地を往復するその時に限って何やら事件が起きると
いうジンクスがあり、今回も気になっていたが、アンマン出発前から
その運命から逃れられないことになった。
帰国直前の打ち合わせで訪れた某NGOの事務所からアンマンの自宅
アパートへの帰途のタクシーにて、運転手から、「どこから来たのか」
と聞かれた。これは良くあること。
「日本から」と答えると、運転手は「日本か、それは良かった。日本は
良い国だ。」と答える。それもいつものこと。しかしこの運転手は饒舌で、
さらにこう続けた。「日本は良い。それに比べてアメリカはひどい国だ。
ブッシュ大統領はイヌだ。」と言う。
米国嫌いにしても、大統領がイヌとまで、初対面の乗客に良くそこまで
言うかと、印象的な発言だったが、家に帰ってテレビニュースを見たところ
で合点が行った。

[写真:靴投げ事件を報じるアル・アラビーヤTVの画面]
(帰国便に乗る直前、アンマン国際空港構内カフェにて12月14日深夜)
バグダッドでの記者会見の席上でイラク人記者がブッシュ大統領に靴を
投げつけ、言ったことばが、「これが別れのキスだ。犬野郎!」、だった。
この記者に対しては、ジャーナリストの姿勢としてこの行動はいかがな
ものかとか、賓客に例を失するなどの批判があることも承知しつつ、しかし、
このような行動を取るに至ったジャーナリストである前にひとりのイラク人
としての心情は良くわかる。
そして、この行動に同じアラブ人としてヨルダンのタクシー運転手も共感を
憶え、拍手を送っていたのだった。
2度目に靴を投げたときに「(米軍のために)夫を失った女性、親を失った
子からの贈り物だ」と言ったとされるこの記者の思いも、イラクの人々は
もちろん、他のアラブ諸国の人々にも共感を呼ぶものだった。
この記者の所属するTV局アル・バグダディーヤはどちらかと言えばスンニ派
寄りのTV局であると聞いていたが、靴を投げた記者がシーア派の記者という
ところも興味深かった。イラク人に共通する米国大統領嫌いの心情にスンニ派も
シーア派もないというところだろう。
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